人生の中で最も栄養を必要とするのは小学生から高校生にかけての成長期で、この時期は多くの栄養素を成人並みに摂取する必要があります。このため、栄養不足を起こしやすい時期でもあり、適切な栄養補給が特に大切です。
成長期は必要とされるエネルギーや栄養素の量が増えているため、不足しやすい時期と言えます。栄養不足の状態では、正常な発育に障害が出るとともに、感染症に対する抵抗力も低下してしまいます。また、子供たちは解毒のメカニズムが十分に発達していないので、汚染物質や毒素、食品添加物などにも敏感に反応してしまうとも言われています。さらに、最近の子供で増えている、アレルギー、注意欠陥多動性障害、自閉症、生活習慣病には、栄養素のアンバランスが関わっている可能性があります。
◎成長期に大切な栄養素
成長期に特に必要な栄養素は次の通りです。
◆たんぱく質
炭水化物(糖質)、脂質と並ぶ三大栄養素のひとつで、エネルギー源としても働きます。たんぱく質は人間の臓器や筋肉、皮膚、髪などの組織を構成しており、人間の体の基礎をつくる重要な成分です。また、免疫力を高めたり、血液を正常に保ったりと様々な働きを持ちます。
たんぱく質を含む食品
肉類、魚介類、卵、乳製品、大豆
◆鉄
赤血球をつくるのに必要な栄養素です。成長期の子供は、鉄の必要量が増加します。そのため、鉄欠乏貧血になる子供も少なくありません。貧血は豊かな感情や集中力、学習能力の低下、イライラが起こるといわれており、子供の発育や普段の生活、正常な精神活動にも大きな影響を及ぼします。
鉄を多く含む食品
肉類:レバー、赤身の肉
魚介類:カツオなどの赤身の魚肉、アサリ、シジミ、ヒジキ
野菜:小松菜、菜の花
豆類:大豆、インゲン豆、納豆
◆カルシウム・マグネシウム
健康な骨や歯の発育に必要な栄養素です。子供から大人まで、どの年代でも不足しやすい栄養素で、特に成長期に不足すると骨や歯の形成障害を起こし、歯の質が悪くなったり、あごの発育に影響が出ることがあります。食事で補うことも大切ですが、日光に当たることで皮膚でつくられるビタミンDはカルシウムの吸収を良くし、寝ているときに分泌される成長ホルモンは骨を成長させ体を大きくしてくれるため、より丈夫な骨をつくるためには、食事のほかにも適度な運動や十分な睡眠を取ることも大切です。また、マグネシウムは、体内で約300種類以上もの酵素の働きを助けるミネラルの一種で、カルシウムと密接な関わりがあり、カルシウム同様、骨や歯の形成に必要な栄養素です。
カルシウムを多く含む食品
乳製品:チーズ、ヨーグルト、牛乳、スキムミルク
魚介類:しらす干し、干しエビ、ししゃも、わかさぎ、田作り
野菜類:ケール、大根の葉、小松菜、切り干し大根
大豆製品:がんもどき、木綿豆腐、高野豆腐、納豆
その他:ひじき、ごま
マグネシウムを多く含む食品
野菜類
大豆製品:大豆、豆腐、納豆など
穀 類:玄米など精製していない穀類
種実類:アーモンド、落花生、ごま、そばなど
魚介類:キンメダイ、干しエビ、ヒジキ、ワカメなど
◆亜鉛
たんぱく質・核酸の代謝に関与して、健康の維持に役立ちます。また、味覚を正常に保つためにも必要で、皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きもします。亜鉛はミネラルの中で最も欠乏しやすい栄養素で、不足すると味覚障害が起きたり、肌のかさつきや皮膚炎、脱毛、爪の斑点、胃腸障害、免疫機能の低下、下痢、貧血、精神障害、傷の治りが遅くなるといった症状がみられます。成長期の子どもが亜鉛不足になると、細胞の生成やたんぱく質の合成がうまくいかなくなるため身長や体重などの発育に著しい遅れがみられます。思春期では、第二次性徴が遅れることがあります。成長期で必要量の多い子供は特に意識して摂取する必要があります。
亜鉛を多く含む食品
魚介類:牡蠣、ほたて、かに
肉類:豚レバー、牛肉
その他:玄米ごはん、納豆、卵
◆ビタミンB群
ビタミンB群とは、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチンの8種の総称です。8種類のビタミンB群はそれぞれ性質や働きが異なります。ビタミンB群は、それぞれ助け合いながら、脳や神経、皮膚などを健康に保つビタミンです。また、ビタミンB群は、炭水化物をはじめとする三大栄養素の代謝やエネルギーの産生を補助するはたらきもあります。
ビタミンB群を多く含む食品
<ビタミンB1>穀類の胚芽、豚肉、レバー、豆類など
<ビタミンB2>レバー、卵、大豆、乳製品、葉菜類など
<ビタミンB6>かつお、まぐろなどの魚類、レバー、肉など
<ビタミンB12>魚介類やレバーなど
<ナイアシン>魚類(かつお・ぶり・さばなど)、豆類や果実類など
<パントテン酸>牛乳、卵
<葉酸>ほうれん草などの緑黄色野菜、小麦、マッシュルーム、酵母、レバーなど
◎バランスの良い食事とは
主食・主菜・副菜をそろえましょう!
色々な食品から、身体に必要な炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を過不足なく摂ることで、食事のバランスが整います。しかし、どの食品をどのくらい食べればよいか、なかなか難しいでしょう。バランスの良い食事の第一歩は「毎食、主食・主菜・副菜を摂る。その他に、毎日果物と牛乳・乳製品を摂る。」ということです。それぞれには次のような大切な働きがあります。
主食・・・ごはん、パン、めん類など。身体を動かすエネルギー源になります。
主菜・・・肉、魚、卵、大豆製品など。骨や筋肉、血液をつくります。
副菜・・・野菜やきのこ類、海藻類など。身体の生理機能を整えます。
牛乳・乳製品・・・骨や歯をつくるカルシウムを補います。
果物・・・主にビタミンCやカリウムを補います。
また主食・主菜・副菜は、調理法や食材が重ならないようにすることも大切です。例えば、主菜がポテトコロッケなら副菜にはポテトサラダを添えない、主菜が揚げ物ならマヨネーズを使ったサラダを添えない、などです。
煮る・焼く・蒸す・炒める・揚げるなどの調理法と、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味といった色々な味を組み合わせて主食・主菜・副菜をそろえることで、バラエティに富んだ食事内容になり、バランスの良い食事になります。
◎栄養補給で注意すべきこと
【過剰摂取】
小児を対象とした試験が行われることは少ないため、資料は十分ではありませんが、一般に子供は成人よりもビタミンの毒性に敏感に反応するといわれています。
そのため、12歳以下の子供に対しては過剰症への注意が大切です。
特に、ミネラルや脂溶性のビタミンをサプリメントで摂取させる際には、各年齢の上限量とサプリメントの配合量を必ず確認してください。
【偏食・欠食】
近年では、家庭の事情で子供の個食(孤食)が増え、同時に、加工食品、ファーストフードの利用が増加したことで、栄養バランスの極端な偏りが発生しています。
また、夜型生活の影響で朝になってもお腹が空かず、朝食を食べずに学校に向かう「朝食の欠食」が増えており、平成21年の国民健康・栄養調査では、14歳以下の子供の約6%が朝食を欠いているとの調査結果が出ています。
【参照】
http://www.healthy-pass.co.jp/nutritional-therapy/lifestage/life-stage_8/